2002年(日本版2005年) 作者:スティーブン・キング
翻訳:白石 朗
ご存知ホラーの帝王スティーブン・キングの2002年の作品である。
実際には1999年にほとんど書きあがっていたらしいのだが、キング自身の交通事故というアクシデントによって発行が2002年にまでのびている。
この作品には奇妙な符合があった。
冒頭に出てくる交通事故のシーンだが、これを書き上げた後に自身の交通事故である。
あとがきに本人が述べているが、実際の事故の後、小説に手を加えることは一切なく、そっくりな体験はまったくの偶然だったらしい。
この事が何らかの予兆であったのかどうかは本人もあえて否定しているが、一部のファンの間では当然話題に上った話である。
内容はホラーというよりも、独自のキングワールドが展開するファンタジーの部類と思われる。
訳者の白石氏によると―あえて似ている作品を探すのなら『グリーンマイル』―とあとがきにある。
とはいってもキング独自の詳細な残酷描写や、心理描写、また独特な世界観は健在なのでキングファンならずともお勧めできる作品の一つである。
ストーリー
二〇〇一年七月、米国ペンシルバニア州道三二号線上において一人の警官が殉職した。
彼の名はカーティス・ウィルコックス、ペンシルバニア州警察D分署巡査である。
カートはいつものように仕事に忠実に、整備不良のトラックを止め点検し、路上の安全を確保しようとした。
その安全を確保しようとした行為が、彼自身の安全をおびやかし命まで奪おうとは思いもせずに・・・・・。
彼には妻と息子、双子の娘がいた。
その息子ネッド・ウィルコックスは彼の死後、D分署へちょくちょく顔を出すようになる。
ハイスクールの普通の学生ならば、生活のすべてであろう楽しみをけってまで、父親の思い出に浸るためD分署での無給の奉仕活動を選ぶのである。
D分署の警官たちは、疎ましく思うことなく彼を“家族”の一員として暖かく受け入れる。
彼らは悲しみの心理に通じているからだ。
たいていの警官は悲しみのことについて、いやというほど知っているものである。
ある日、ネッドは署内にあるBガレージの中に存在するあるものに気づいてしまう。
証拠品として押収された、一九五四年型ミッドナイトブルーのビュイック8である。
(正確には“ビュイックの形をしたもの”であった。)
ネッドは、分署長で父親のカートの親友でもあったサンディから、ビュイックもどきにまつわる秘密のさまざまな現象を聞かされる。
そのうち分署の仲間も加わり、過去の話に聞き入るネッドであった。
ビュイックとは何なのか?父親の死と関係ないのか?
ネッドは話に引きずり込まれ、次第にビュイック自体に心を奪われていく。
すべての話を聞き終えた時、ネッドがとった行動とは・・・・・。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
キング独特の比喩と補足の多い文体で、一見難解なように見えるが、これもファンにはたまらない魅力で(これがなければキングではないほど)、慣れるとやみつきになる。
前半は登場人物の紹介的な要素も多く、たんたんと分署の日常が、ネッドの行動を絡めながら叙情的に進んでいくばかりである。
その何の変哲もない日常が、後半いきてくるのである。
がちがちのホラー小説と思って読むと肩透かしを食うかもしれないが、そこはやはりキングである。
うわべだけのホラーよりもよほど怖いホラー要素もある。
小説の面白さは、想像する所にあるのではないだろうか?
読者は、主人公または一登場人物に自分を置き換えてストーリーを追体験する。
自分の身に起きた時に感じる恐怖―
スティーブン・キングはこれを最も的確にとらえることのできる作家の一人である。
私が思うに、キングのストーリーは映像化に向くものと向かないものがあると思う。
この作品なども、下手に映像化するとただの“不思議な話”で終わってしまう可能性もある。
この原作の怖さや不気味さが、映像によって表現できるであろうか?
もしも映像化されるのなら、くれぐれも一流のスタッフで大事に作ってほしいものだ。
(本音は、素晴らしく原作どおりにできた映像も見て見たい気がするのだが・・・。)
翻訳:白石 朗
ご存知ホラーの帝王スティーブン・キングの2002年の作品である。
実際には1999年にほとんど書きあがっていたらしいのだが、キング自身の交通事故というアクシデントによって発行が2002年にまでのびている。
この作品には奇妙な符合があった。
冒頭に出てくる交通事故のシーンだが、これを書き上げた後に自身の交通事故である。
あとがきに本人が述べているが、実際の事故の後、小説に手を加えることは一切なく、そっくりな体験はまったくの偶然だったらしい。
この事が何らかの予兆であったのかどうかは本人もあえて否定しているが、一部のファンの間では当然話題に上った話である。
内容はホラーというよりも、独自のキングワールドが展開するファンタジーの部類と思われる。
訳者の白石氏によると―あえて似ている作品を探すのなら『グリーンマイル』―とあとがきにある。
とはいってもキング独自の詳細な残酷描写や、心理描写、また独特な世界観は健在なのでキングファンならずともお勧めできる作品の一つである。
ストーリー
二〇〇一年七月、米国ペンシルバニア州道三二号線上において一人の警官が殉職した。
彼の名はカーティス・ウィルコックス、ペンシルバニア州警察D分署巡査である。
カートはいつものように仕事に忠実に、整備不良のトラックを止め点検し、路上の安全を確保しようとした。
その安全を確保しようとした行為が、彼自身の安全をおびやかし命まで奪おうとは思いもせずに・・・・・。
彼には妻と息子、双子の娘がいた。
その息子ネッド・ウィルコックスは彼の死後、D分署へちょくちょく顔を出すようになる。
ハイスクールの普通の学生ならば、生活のすべてであろう楽しみをけってまで、父親の思い出に浸るためD分署での無給の奉仕活動を選ぶのである。
D分署の警官たちは、疎ましく思うことなく彼を“家族”の一員として暖かく受け入れる。
彼らは悲しみの心理に通じているからだ。
たいていの警官は悲しみのことについて、いやというほど知っているものである。
ある日、ネッドは署内にあるBガレージの中に存在するあるものに気づいてしまう。
証拠品として押収された、一九五四年型ミッドナイトブルーのビュイック8である。
(正確には“ビュイックの形をしたもの”であった。)
ネッドは、分署長で父親のカートの親友でもあったサンディから、ビュイックもどきにまつわる秘密のさまざまな現象を聞かされる。
そのうち分署の仲間も加わり、過去の話に聞き入るネッドであった。
ビュイックとは何なのか?父親の死と関係ないのか?
ネッドは話に引きずり込まれ、次第にビュイック自体に心を奪われていく。
すべての話を聞き終えた時、ネッドがとった行動とは・・・・・。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
キング独特の比喩と補足の多い文体で、一見難解なように見えるが、これもファンにはたまらない魅力で(これがなければキングではないほど)、慣れるとやみつきになる。
前半は登場人物の紹介的な要素も多く、たんたんと分署の日常が、ネッドの行動を絡めながら叙情的に進んでいくばかりである。
その何の変哲もない日常が、後半いきてくるのである。
がちがちのホラー小説と思って読むと肩透かしを食うかもしれないが、そこはやはりキングである。
うわべだけのホラーよりもよほど怖いホラー要素もある。
小説の面白さは、想像する所にあるのではないだろうか?
読者は、主人公または一登場人物に自分を置き換えてストーリーを追体験する。
自分の身に起きた時に感じる恐怖―
スティーブン・キングはこれを最も的確にとらえることのできる作家の一人である。
私が思うに、キングのストーリーは映像化に向くものと向かないものがあると思う。
この作品なども、下手に映像化するとただの“不思議な話”で終わってしまう可能性もある。
この原作の怖さや不気味さが、映像によって表現できるであろうか?
もしも映像化されるのなら、くれぐれも一流のスタッフで大事に作ってほしいものだ。
(本音は、素晴らしく原作どおりにできた映像も見て見たい気がするのだが・・・。)

